日時 :2022年12月24日(土)12:55-16:45
会場 :Zoomを用いたオンライン講演会
参加費 :無料
対象 :主として高校生等や一般の方
※年齢制限はありません。奮ってご参加ください。
申込 :下記の「お申込みフォーム」からお申込みください。
主催 :日本物理学会大阪支部
後援 :日本物理教育学会近畿支部、大阪府教育委員会、兵庫県教育委員会、和歌山県教育委員会、大阪市教育委員会

趣旨

サイエンスに興味ある高校生や一般の方が参加できる公開シンポジウムを開催します。テーマは「光圧で拓く!光圧を制す! ーミクロから宇宙までー」です。

光は物質に力(光圧)を及ぼすことが知られています。17世紀に彗星の尾を見たケプラーによって推論されたこの現象は、19世紀の終わりから20世紀の初頭にかけて理論的にも実験的にも実証されました。その後、光の力はミクロな物質の操作から宇宙船の推進にまで応用されてきました。また、光による極微な力による雑音を克服することにより重力波の検出に成功しています。

当日はこのような光の力が関わる物理現象と先端的技術の関わりについて、第一線の講師の皆様にわかりやすく講演していただきます。

プログラム

開会挨拶
12:55~13:00 石原 一(日本物理学会 大阪支部長)
講演
13:00~14:00 ナノ物質を自在に操る光のピンセット 笹木 敬司 先生 北海道大学 電子科学研究所 光科学研究部門光システム物理研究分野 教授
1986年、大阪大学工学研究科応用物理学専攻にて学位取得。徳島大学医学部助手、JST-ERATO極微変換プロジェクト研究員、大阪大学工学部助手・助教授を経て1997年より現職。光の不思議さと美しさに魅せられて40年。専門は光マニピュレーション、ナノフォトニクス、プラズモニクスなどの光科学技術をベースとした学際的研究。 ホームページ
光を物体に照てると力が働くという不思議な現象があります。2018年のノーベル物理学賞は、この光の力を使ってミクロな粒子や細胞を触らずに摘む光ピンセット技術を発明したアシュキン博士に授与されました。光ピンセットは、最近、ナノメートルサイズまで光を絞り込む最先端光学技術により、ナノ粒子や分子を個々に操り自在に並べて新しい物質や材料を創り出す研究にまで進歩しています。ここでは、光の力が切り拓く新しいナノ科学の世界について紹介します。
14:20~15:20 世界初の宇宙帆船「イカロス」が切り拓く太陽系大航海時代 森 治 先生 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 学際科学研究系 教授
2002年、東京工業大学で学位取得。東京工業大学にて助手、宇宙航空研究開発機構にて助手、助教を経て2022年より現職。専門は動力学・制御、宇宙機システム、推進システム。小惑星探査機「はやぶさ」、「はやぶさ2」のスーパーバイザー、化学推進系責任者、ソーラー電力セイル実証機「イカロス」のプロジェクトマネージャ、ソーラー電力セイルによる外惑星領域探査検討チームのとりまとめを務める。ホームページ
「ソーラーセイル」は、宇宙空間で太陽光の圧力をセイル(帆)に受けて、燃料なしで推進力を得ることができる夢の宇宙帆船です。「ソーラー電力セイル」は、ソーラーセイルに加え、セイルの一部に薄膜の太陽電池を貼り付けることで、太陽光による発電も同時に行う日本独自のアイデアです。JAXAは2010年にソーラー電力セイル実証機「イカロス」を打ち上げ、世界で初めてソーラーセイルとソーラー電力セイルを実証することに成功しました。これを踏まえ、ソーラー電力セイルで木星圏を探査する計画を検討しています。
本講演では、これらのミッションの内容について紹介し、モノ作りの面白さ、世界一に挑戦することの意義について述べます。
15:20~15:40 休憩
15:40~16:40 光の圧力ノイズを撃退せよ!重力波で宇宙誕生の謎を解き明かそう! 川村 静児 先生 名古屋大学大学院 理学研究科 理学専攻 教授
1989年、東京大学にて学位取得。カリフォルニア工科大学にて Member of Professional Staff、国立天文台にて准教授、東京大学宇宙線研究所にて教授を経て、2017年より現職。専門は重力波物理学。アメリカのLIGOプロジェクトの初期メンバーとして重力波検出に貢献。現在は、宇宙重力波望遠鏡DECIGOの代表として宇宙誕生直後に発生した原始重力波の検出を目指している。著書に「重力波とは何か」(幻冬舎)ほか。 ホームページ
重力波検出器にはレーザー干渉計が用いられています。重力波がやってくると鏡が揺さぶられ、その動きを干渉計を用いて精密に計測するのです。そこで問題となるのが、光の圧力の量子的なノイズにより鏡が揺さぶられることです。しかし、このノイズは見て見ぬふりをすることができ、結果的に不確定性原理で決まる標準量子限界を破ることも可能です。
本講演では、このノイズの撃退方法、そしてその後に期待されている、宇宙誕生の謎の解明に迫ることについても説明します。
閉会挨拶
16:40~16:45 坂井 徹(日本物理学会 大阪支部 幹事)
 
石原 一(日本物理学会大阪支部長) 大阪大学大学院 基礎工学研究科 物質創成専攻 教授
三菱電機株式会社、科学技術事業団「さきがけ研究21」研究員、大阪大学大学院基礎工学研究科 助教授、大阪府立大学大学院工学研究科 教授を経て、2017年より現職。2016年から2021年まで文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「光圧によるナノ物質操作と秩序の創生」領域代表。専門は光物性理論、量子光学理論。光とナノ物質が織りなす新奇な物理現象やその応用を理論的に研究。編著書に「光圧物性制御のための新しい光利用」(朝倉書店)。ホームページ

坂井 徹(日本物理学会大阪支部 幹事) 兵庫県立大学大学院 理学研究科 物質科学専攻数理解析学講座 教授、量子科学技術研究開発機構 SPring-8 研究グループリーダーを兼務
姫路工業大学理学部物質科学科応用数学講座にて助手、都立科学技術大学工学部人文自然系や東北大学大学院理学研究科物理専攻にて助教授などを経て、2015年より現職。専門は量子スピン系や強相関電子系ほか。前者では量子効果による新現象を探り、後者では通常の金属とは異なる新奇な性質について理論的数値的研究を行う。著書に「計算物理学」(共立出版)。 ホームページ

実行委員会

委員長
石原 一(大阪大学)
委員
杉田 歩(大阪公立大学)、三原 基嗣(大阪大学)、 魚住 孝幸(大阪公立大学)、坂井 徹(兵庫県立大学)